第83章 最終話　You belong with me ☆

「ねぇ、これどっちの色がいい？」


セリーナさんに連れられてやってきたのは、HERMESのブティック。

ボーナスで買うと言うバーキンのブラックとキャメルを見比べながらうーーんと悩むこと30分が経過した。


「黒の方が、服を選ばなそうですよね」

「でも、黒のピコタンを持ってるのよね…
キャメルにしようかしら…」


女性の「どっちがいい？」は大抵すでに決まっていることが多い。
わたしはセリーナさんの決断を待ちながら、他の商品を眺めていた。


「わ…スカーフですら高そう…」


値札すらついていない豪華な柄のスカーフを眺めていると、だんだんと視界が歪んでスカーフの柄がぐにゃ…と曲がったように見えた。


「え…」


そして次に来たのはクラクラする立ちくらみ。

思わずその場に座り込んだわたしを見て、慌ててセリーナさんが駆け寄ってきた。


「ちょっと！大丈夫？！」

「っ…なんか…吐きそうです…」

「っええ！？ちょ、ちょっとお手洗い行きましょう！」


慌てたセリーナさんに付き添わせながら、お店のテナントにあるお手洗いに向かった。

個室に入ってトイレを見た瞬間、我慢していたものが一気に押し寄せてきて、たまらず嘔吐したわたし。


なに…？この間もフラフラしたし貧血…？
昨晩も秀一とベッドで仲良くしてただけで気持ち悪くなったし…
身体、どこか悪いのかな…


思い当たる節が全くなく、とりあえず病院で検査を受けた方がいいのかも…と考えながらトイレの個室を出ると、化粧直しをしながら待っていたセリーナさんにまさかの質問をされる。


「あなた、妊娠してるんじゃない？」

「え……」


目から鱗だ。

確かにそう言われてみると、以前は必ず排卵日には避妊していたけれど結婚して以来はそれもやめた。

自然の成り行きに任せようと思ってはいたけど…そうか…妊娠…