【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第10章 first love ☆
赤井side
近い席に着席したお陰で、盗聴器がなくても声が聞こえるようだ。
カムフラージュのため、一応ホットコーヒーとパスタ、お子様ランチを注文したあとは、ずっと彼女らの会話に聞き耳を立てていた。
趣味や特技を聞かれたとき、蘭さんは空手と言いかけ、サラは射撃と言う。
隣でボウヤが呆れたようにため息をついた。
「なんか、あんま心配しなくてもいーかもね」
咄嗟に男にウケるような趣味を言えないあたり、こう言う場に向いていないと言うことがよくわかる。
「それにしても、赤井さんは複雑だよね。
彼女と妹が同じ合コンに参加してるわけだし」
「まあ、妹のほうはあまり心配していないがな」
真純を見ると、会話なんてそっちのけで出てきたご飯に夢中のようだ。
それはそれで、もう少し女らしくしてほしいという兄心が湧くが、今はそのボーイッシュさが幸いしているらしい。
だんだん会話が盛り上がっているが、男性の盛り上がりに女性陣は若干引き気味のようで、確かにボウヤの言う通り、案ずることはなかったのかもしれない。
ボウヤも気の抜けたように、出てきたお子様ランチを食べ出した。
その時、
「じゃあ、みんなのカップ数教えてよー!
君なんて服着ててもそんな目立つんだからE…いやF…」
と言う男の声が聞こえてきて、不意にボウヤを見るとお子様ランチを食べていると言うのに鬼の形相で、今にも飛びかかりそうな雰囲気だ。
「落ち着け。今出て行ったら会話を盗み聞いていることがバレる」
そう言って、ボウヤを宥めたそのあと、
「もー。ヒミツに決まっているでしょ?
だって、教えちゃったら、楽しみがなくなるじゃない?
触ったときの」
と言う挑発的なサラの声が聞こえてきて、俺は思わず持っていたフォークを片手で握ったままバキッと折ってしまう。
「あ、赤井さん…落ち着いて…」
ボウヤが焦ったように言う声にハッとして、俺はコホンと咳払いをすると、
「つい…」
とだけ言う。
しかし、あんな事を言うなんて何を考えているんだ。
他の女性陣をフォローしたつもりだろうが、自分がロックオンされてどうする。
もう早くここから連れて帰りたいと思うのはボウヤも同じみたいで、手をつけていたお子様ランチはそれ以上減らず、じっと向こうの席を見ていた。