【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第77章 枯れない花 ☆
赤井さんに触れられると、そこから全部溶け出していくような気持ちになった。
思えば特段彼を好きになるような明確なエピソードがあったわけじゃない。
ただ、「病院で目が覚めて1番最初に視界に入った知らない人」で、
「その後、リンゴを食べたいなんて口実で毎日お見舞いに来てくれた人」で、
「護衛のために一緒に住むって言われたと思えば、実は元々同棲していた恋人」で、わたしは恋人のはずだったこの人の記憶がないらしい。
何も思い出せないのに、雷の日に彼の腕の中に抱きしめられると、妙に安心した。
彼が泣いているところを目の当たりにすると、思わず抱きしめたくなった。
彼との思い出を、思い出したいと強く思うようになった。
そして、数日前
リビングのソファーで…
「サラ!!溢れてる!!」
「っえ!?わ!熱っ!!」
隣で安室さんに注意されたときには既に遅く、わたしが注いでいたカップから熱々のコーヒーが溢れ出て、取っ手にかけていた親指にかかった。
「早く冷やさないと。ほら、こっち」
「ご、ごめん…」
安室さんに手を引かれ、コーヒーを注いだ親指をシンクの水道で流水にあてる。
冷たい水で、熱った脳が冷やされていくようだ。