【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第76章 それを愛と呼ぶなら ☆
「ねえ、わたしと赤井さんってどんなカップルだったの?」
「なんですか、突然」
ポアロでのバイト中、店仕舞いをしながら突然そんな事を尋ねたわたしを安室さんは目を丸くしながら見た。
わたしは安室さんの方を見ずに、カップを洗いながら続ける。
「安室さんと別れた理由も彼なんだよね?」
「僕の口から全て話すのは良くないかと」
「いいから、教えて?」
「…なら、これだけ。
お互いを思い合うあまり、自分を犠牲にしてしまう。
そんな2人だったよ。君たちは」
懐かしむように、安室さんはそう言って笑ったので、わたしは思わず彼の顔を見た。
そんなに深い関係だったんだ…
そう思うと、どうしてか嬉しくてドキドキする。
何一つ覚えていないのに、赤井さんと恋人同士だった事実が垣間見えるたびに、胸がぎゅっと苦しくなって、うまく息ができない。
なんだろうこの気持ち。
恋人であるはずの赤井さんのことを忘れてしまったのに、その赤井さんのことをまた好きになっていくような、そんな感覚がした。
安室さんにわたしたちのことを聞いたものの、詳しく教えてもらうことは出来ず、もちろん何一つ思い出せることなくポアロのバイトを終えたわたし。
ロッカーに入れてあったスマホを確認すると、有希子さんからLINEが入っていた。
「サラちゃんの好きな、チーズケーキを焼いて見たの。
帰りによってねーん」
そう書かれてある。
「チーズケーキ!!楽しみーー!」
それに、工藤邸に行けば赤井さんに会える。
そうでなくても家に帰れば夜には会えるというのに、わたしはほんの少しでも早く彼に会えることを心底喜んでいるみたい。
あの雷の日、キスをした。
そして観覧車で彼が泣いているところを見た。
愛しいと思ってしまった。
もしも今、わたしが赤井さんに好きだと言ったら、彼はどんな顔をするんだろう。
記憶を無くしているくせにと怒るだろうか?
それとも、嬉しいと喜んでくれる?
*
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