【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第73章 アイラブユーを探してる
退院の日
ジョディさん達が迎えにくる時間の3時間前に、誰かが病室のドアをノックした。
コンコン
「はい?」
「失礼します」
聴き慣れたその声の主が中に入ってきて、わたしは思わず声を上げる。
「安室さん!来てくれたの!」
「コナンくんから色々聞いていたんですが、立て込んでいて来るのが遅くなってすみません。
身体、どうですか?」
「もう大丈夫!今日家に帰るの」
「退院、今日だったんですか。
じゃあこのお見舞いは、家に帰ってから食べてください」
そう言って安室さんは、フルーツが入ったカゴをわたしの退院の荷物の隣に置いた。
「…りんご…」
「?りんご、嫌いでしたっけ?」
「ううん?…毎日お見舞いに来てくれる人がいつも食べてるから」
「そうですか。まあ、君とアップルパイを食べたことよく覚えているから、嫌いなはずないと思ったけど」
安室さんはそう言って、付き合ってた頃の話を垣間見せた。
彼とわたしは一時期恋人という関係だった。
別れた今は良きバイト仲間に戻っている。
「あれ…?」
「ん?どうしました?」
安室さんとのことを、脳裏に浮かべた時ある疑問がわたしの中に浮かんだ。
「わたしたちって、どうして別れたんだっけ…?」
その問いに、安室さんは目を見開いてわたしを見たかと思えば、優しい目をして答えた。
「僕よりも君を想う気持ちが強い男が他にいたから」
「え…」
誰?だってわたし、今誰とも付き合ってない…
けれど別れたあの日、海での記憶の中に安室さんともう1人誰かいたような気がする。
「誰だっけ…」
「それは、君が自分の力で思い出してください」
そう言いながら安室さんは優しく微笑んだ後、病室を出て行った。
わたし、ホテルの階段から落ちて怪我をした日のこと以外にも、何か忘れていることがあるの…?
何か特別なことを、忘れている…?
それが何か、今のわたしにはわかるはずもなかった。
*
*