【R18】You belong with me 【赤井秀一】
第54章 君に届け ☆
「じゃあ、私は先に上がりますね」
「はーい。梓さんお疲れ様です!」
本日のクローズ担当であるわたしに鍵を渡しながら、梓さんは手を振って帰っていった。
今日は水曜日で、ポアロはいつもより少し早い17時に店を閉めることになっている。
今は15時。
店にいるのは、学生さんの男の子だけだ。
あの子、学校休みなのかな。
最近よく来て、あの席でずっと勉強してるんだよね…
お客さん1人だけだし、サービスしてあげよ。
そう思い立って、わたしはその子にコーヒーのおかわりを入れに席に向かった。
一生懸命解いてるのは、英語の問題。
んー。と頭を掻きながら考えていたその男の子は、わたしがコーヒーを淹れたのに気付いた。
「あれ?…あ、すいません。コーヒーたった一杯で長時間いて…」
「あ、違うの。なんか、すごい頑張ってるみたいだから、サービス」
そう言うと、その男の子はパッとわたしの顔を見た。
初めて、真正面からその子の顔を見たけど、短髪の黒髪で、黒目が大きくて、鼻筋も通って、いわゆる美男子という感じだ。
杯戸高校の制服を着ている。
「…ありがとうございます」
彼はそう言って、パッとわたしから目を逸らした。
「最近よく来てるよね。」
「テストもうすぐで。
今日は創立記念日で休みなんす。
ここ、落ち着くから」
そう言いながら、彼はまた手元の問題に目を落とした。
わたしも同じように問題集を見ると、彼が記入した英語の解答の中で気になる箇所を見つけた。
「そこ、間違ってる。」
「え?」
「marry の次は with じゃなくて toだよ」
「え…あ、本当だ。」
その子は、書いていた答えをガシガシと消しゴムで消すと、その拍子に、机に置いてあった参考書が何冊かバサバサッと床に落ちた。