第52章 Getaway Car 　☆

しばらく黙ってそれを聞いてると、


「あ、赤井さん？ごめんね！」

「あぁ。…友達出来たのか？」

「うん。同室の子！同い年でナナって言うの」


嬉しそうにそう言うサラ。
サラが嬉しそうだと、俺もつられて顔が緩む。


「良かったな。」

「うん！あ、ちょっと待って。
ナナ、どこいくのー？」

「エイジの部屋でみんな集まって映画観るって。
あんたも電話終わったら来なよ」

「ん。わかった！
…あ、赤井さん！
あのね、今日わたし、初めてアクセル踏んだんだよ！」


そう言ってまた俺に嬉しそうに話しかけてくる。

さっき、かすかに聞こえた
エイジの部屋で集まって映画観る
って、お前も行くのか…？

そんなことを考えながら、俺は嬉しそうに話すサラに相槌をうつ。


「そうか。無茶な運転するなよ？」

「だから、赤井さんにだけは言われたくないよ！
何なら、赤井さんより運転上手くなるかもよ？」

「ホォー。それは楽しみだな」


ふふ。と笑いながらそんなこと言うサラが可愛くて、このままずっと話していたい。
そう思った時、受話器の向こうから男の声がした。


「サラー。お前来ないの？」

「あ、赤井さんちょっとごめんね。」


サラはそう言って俺の電話をつながったまま置いたあと、声をかけてきた男と親しげに話している。


「映画何観るの？」

「ナナが、SAW観たいって」

「え！怖いやつじゃない！
わたし、観ないよ？？」

「怖いの？ガキじゃねーんだから。」

「怖いんだから仕方ないでしょ？」


そんなやり取りが、遠くで聞こえる。