第48章 カブトムシ　☆

赤井side


オークション当日。
昼から開催されるオークションに潜入するために、俺達は朝早くから工藤邸へ向かった。

もう手慣れた自分の変装を済ませ、サラの変装が完成するのをリビングで待っている時、ジョディが俺に徐に話しかけた。


「サラちゃん、協力してくれるようでよかったわね」

「…あぁ。」


正直、良かったとは思っていない。
今でも、出来るだけあいつを巻き込みたくはないと思っている。
実際、ジンとウォッカを街中で見たと言っていた日、あいつは尋常じゃないぐらい取り乱していた。


フゥとため息をつきながら有希子さんが出してくれたコーヒーを口に運ぶと、ジョディは続けて言う。


「ねえ秀。サラちゃんと結婚するの？」

「…なんだ突然」

「指輪、してたから。右手だけど」


俺は少しだけ考えて、ジョディに答えた。


「…そのつもりだ」

「そう…良かったわね。
心配してたのよ。あの子と別れたって聞いた時は。
まるで、宮野明美さんが亡くなった時みたいに落ち込んでいたから」

「……心配かけたな」


珍しく素直にそう言う俺を見て、ジョディは目を丸くしている。


「…なんだよその顔」

「やっぱり、変わったわね秀。」


ジョディはフッと笑ってそう言うと、俺と同じようにコーヒーを口に運んだ。


その時


「秀ちゃ〜ん！見て見て！
完成よ！サラちゃんの変装〜！」


有希子さんがいつにも増してハイテンションでリビングのドアを開けた。