第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
「…しょうがないな、コーヒー奢ってやるよ」
「ありがとう…」
「ちょっと待ってろ」
「(最後の仕上げといこうかしら。)」
私は日記帳の存在をアオキに話す。
「そういえば昨日、カナザワがコーヒー買った時にね」
「え?」
「中にゴキブ───」
「お、おい!」
「ん?なんだ?クロサキもコーヒーいるか?」
「ありがとう。でも私は“ゲテモノ好き”じゃないから遠慮しておくわ」
「……?コーヒー苦手か?じゃあまた明日な」
アオキが部屋を出たのを見計らってカナザワが話しだした。
「言いがかりをつけて悪かった…」
「わかってもらえたならいいのよ」
「シラユキの写真…見たのか?」
「すごい枚数ね。個展でも開くのかと思ったわ」
「う…。他の人には絶対黙っておいてくれ」
「もちろん。これからもサークルメンバーとして仲良くしていきましょ」
「と…当然じゃん。」
「じゃあ私は部屋に戻るわね」
裏工作が成功した。みんなの疑惑の目を欺けたわ。逃げ切った時のあの高揚感。最初こそハラハラしたけど最高だったわ。
これでカナザワは少し黙るようになっただろう。カナザワの疑いは言いがかりレベルだったけど…あながち間違いではない部分もあったから恐ろしい。
このまま何事も無く4日過ぎればいいんだけど。
◇◆◇
「(もう朝…寝た気がしないわ。)」
──2日目──
警察が来るまであと3日。
翌朝のリビングには、ミドリ、アカイ、スミレ、私の4人が居合わせていた。
話題がシラユキになってしまうのは自然な流れだった。
…昨日カナザワから疑いの目を逸らすことに成功した私は“このまま警察すらも騙せるんじゃないか?”心のどこかで、そう思っていたのかもしれない。
───その油断がアダとなった。
「フーン、で?どうして死んじゃったの?」
「スミレちゃん…ちょっと、言い方…」
「え?ミドリ、アンタ気になんないの?」
「そうじゃなくって…」
「まぁ確かに、なんで落ちたかは謎よね」
軽い気持ちで口を挟むと、一瞬にしてその場が静まり返った。
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