第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
「あぁ…俺が駅の事務所に連れて行かれるところをな…。それからシラユキは口止め料を…!」
「(とんだ悪女だったのねシラユキ…。まぁ私も人のこと言えないけど…)」
「あいつ…お金なんてどうでもよかったんだ…。ただ俺を困らせて喜んでいるだけだった!」
「……………」
「…信じられないよな…。示談までしてしまってるし…」
「信じるとか信じないとかどうでもいいわ。正直アンタの秘密を知ったところで私には何の得もないもの」
「クロサキ…」
「シラユキは最低な女だった。それでいいんじゃない?」
「…あぁ、そうだな。やっぱりお前は優しい奴だな。ありがとう…」
「………。じゃあ私も部屋に戻るわ」
「ああ。……。それにしても…シラユキはなんで死んだんだろうな…?」
「……………」
私は独り言のようなアカイの言葉に答えることなく部屋を出た。これでやっと終わったんだ。もうシラユキのことは忘れよう。これ以上、何も話したくない。犯人は…私だから…。
◇◆◇
最後の会議を終え、アオキの締めで解散になった。少し遅れて、アカイもリビングから出て行った。
「さてと…」
最後に一つ、やり残してることがある。シラユキのスマホから、ダイイングメッセージを消しておかないと。
「(あった。)」
シラユキのスマホだ。ダイイングメッセージはたしか…これね。私は“クロサキ”と書かれたメールを削除した。
「(よし…これで…)」
完全に消去し、こっそりシラユキの部屋を後にした。
◇◆◇
───翌朝。
警察の到着を数十分後に控えた私は、思い出が残るバルコニーに佇んでいた。
「(…シラユキ)」
思わず笑いが込み上げる。
「そうだ…“コレ”もやっておかないと…」
私はスマホを取り出し、文字を打ち込む。
「おいクロサキ、なにしてる。行くぞ」
「ええ、今行くわ」
完了を押し、スマホの画面を閉じた。
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