第1章 4月5日 ホテル
女の方は胸を弄られたり抱き寄せられたり、そんな僅かな動きで繋がりを嫌でも意識してしまう。
嫌でも、というには語弊があり、すでに薄れつつある苦痛に混ざって這い寄るのは彼女もよく知っているセックスの快楽だった。
女の腹部に手を回し、抱き竦めた男が揺籃のように前後に揺らし始める。
「んン、あ…っぁあ」
背中に男の熱く逞しい胸が当たり、ぬち、ぬち、という音がそのたびに女の切なげな喘ぎと一緒に漏れた。
「ようやく濡れてきた。 案外面倒だな、あんた」
そんな言い様に女が反発するような目で男を見返した。
だが体は異なる。
内側から広がって痺れるような熱さは益々もどかしく、なのに中の動きは緩慢で。
塗られたもののせいかどうかは分からなかった。