第22章 6月6日 湊のマンション、レストラン
「やっぱり泣いてるし」
「泣いてない……」
声を詰まらせて、身を震わせる小夜子を怜治はあやす様に撫でた。
頭から髪が流れる肩や背中。
ようやく怜治に触れられた。
こんなに、いつも近くにあったのに。
『許された気がして』
触れられた箇所が傷を修復するように溶けて解けていく。
ああ、許せないという事は、なんて自分自身をも縛り付けるんだろう。
真っ暗な部屋の中で独りでいた子供の自分が、立ちあがり眩しく光る外への扉を開ける。
「全部が好きだよ」
そんな彼の言葉で。