第5章 苛立ち
「お先に、おやすみなさい」
客間を借りることになり私は挨拶をした
「あぁ」
不死川さんは刀の手入れをしていた
不死川さんの部屋の襖を閉めて客間へと戻る
布団に入ると自然と眠気が襲ってくる
気がつけば私は夢の中にいた
『ここは』
そうかこれは夢か...
私は小さな部屋の押し入れの中に隠れている
『お助けくださいっ』
悲鳴のような声で誰かが許しをこう
その瞬間声の主は血まみれになっていた
私は押し入れの隙間からそれを見ていた
ーー高重ーー
ー高重ー
「高重!!」
目を覚ますと不死川さんが私を呼ぶ
「大丈夫か!」
「え?」
目を擦るとそこはびっしょりと濡れていた
涙と汗だ
うなされる私を不死川さんが起こしてくれていた
「っ、変な夢を見てました」
「そうだろうよ」
起き上がる私に水を差し出す
ゴクッと一口飲み込み少し落ち着く
「寝れそうか」
「たぶん」
そんな私を不死川さんはぽんぽんと宥めてくれた
「っ大丈夫ですよ」
「いいから寝ろ」
促されて私はもう一度布団に入る
その間も変わらなく続く不死川さんの手の動き
心地よい律動に私は眠りに誘われる
すぅーすぅー
と寝息が立つのを確認すると不死川はそっと離れる
最後に優しく頭を撫でて部屋を出て行った
翌朝
私は目覚めがよかった
あの後よく眠れたようだ
「おはようございます」
「おはよお」
不死川さんはすでに朝食の支度をしていた
味噌のいい香り
私は鼻をくんくんとさせる
「犬かよ」
「だっていい香り」
「もうすぐできるから顔洗ってこい」
そう言われて顔を洗いに行った
昨日の夢はなんだったのか
何かを忘れている
そう思った