第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
フッと肩の力を抜き自分の胸元に体を預ける様子が微笑ましく、杏寿郎は抱き締めたまま頭を撫でた。
「その気持ちは分からんでもない。俺も着物を用意した時は少し緊張したからな……、本当にありがとう。早速付けさせてもらっていいだろうか?」
杏寿郎の心地よい温かさや優しい声音に和んでいたは、広い背中に手を回して名残惜しそうに1度ギュッとしがみついた後、自らその手を解いて笑顔で頷き杏寿郎を見つめた。
「はい!お家に帰ったら……その……風鈴を飾り終えてから今みたいに、胸をお借りしてもよろしいですか?」
「聞くまでもないだろう?すぐに付け終えるので少し待っていてくれ」
何を置いても風鈴が最優先なの額に口付けを落とし、ずっと手に握り締めていた帯飾りを自分の帯に挟み込んで指でつついて僅かに揺らす。
それは太陽の光を反射してキラリと煌めき、いつも強い光を放つ杏寿郎の瞳と良く似ているように見え、の頬は紅潮した。
「杏寿郎君の瞳や髪と同じ色です!すごく……お似合いです」
贈り主であるが無邪気に喜ぶ姿に杏寿郎の中でも喜びが膨れ上がり、胸の前で嬉しそうに合わされている手をキュッと握り締める。