第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
「直接の知り合いではないですよ。煉獄さんのお家って旧家でしょう?ここら辺の人は名前くらい聞いたことあるはず……お顔も何をされているのかも知り……ませんが……あの、お客様。そこの通りをその赫い飾りが似合いそうな殿方が凄い勢いで……あ、戻ってきた」
店主が一部始終を説明してくれたがは通りに背を向けて立っていたので何が起こっているのか分からず、扉が開く音に反応して後ろを振り向く。
すると突然見覚えるのある浴衣の色が瞳いっぱいに映し出され、大好きな温かさが全身をつつみこんだ。
「!無事で良かった!また良からぬ輩に攫われたのかと肝を冷やしたんだぞ……1人で出掛けるのは構わない、だが一声掛けてからにしてくれ。置き手紙だけでは本当に君の意思で屋敷を出たのか分からんだろう」
焦りが伝わる声音、全力で走っていたのだと分かるほどに速くなっている鼓動と僅かに上がった体温……その全てがに少しばかりの罪悪感となんとも言えない幸福感を与えた。
「申し訳ございません。杏寿郎君に贈り物をと思っていましたので、こっそり外出してしまいました。これからはちゃんとお声をかけさせて頂きます。探してくださってありがとうございます」