第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
ウンウン唸っていても答えてくれる人はここにおらず、棚に戻すか持ったままにするか……手を出したり引いたりで手が迷子状態である。
そんな少し不審な動きをしていると、店の奥から店主が手の平に数種類の赤色の帯飾りを持って姿を現した。
「お待たせ致しました!赤でも何種類かありますが、どれが想い人に1番お似合いですか?」
からかわれていないと分かりつつ想い人と言う言葉に杏寿郎の顔が頭に浮かび、硝子玉に負けず劣らずの頬が真っ赤に染まった。
その様子が微笑ましいのか店主は穏やかな笑みを浮かべながら、が見比べやすいように手を差し出す。
照れ隠しで困ったように笑いながら、は差し出された店主の手を覗き込み……一瞬で決まった。
「これにします!深い赫、温かい杏寿郎君の色です」
照れはどこへ行ったのか、の顔は幸せそうな色で満され帯飾りを指でそっと摘んで店主へと翳した。
「杏寿郎さん……あら?煉獄さんのところのご子息かしら?」
まさかの店主の言葉には目をパチクリさせて声も出せずにただただ切れ長の瞳を見つめていると、店主はニコリと微笑んで首をコテンと横に傾げる。