第4章 第9章 風柱と那田蜘蛛山 586ページ付近
「……女子なので欲しい物の一つや二つあってもおかしくはないが……どうもしっくり来ないな。よもや攫われたか?!」
1度悪い考えが頭をよぎるとそればかりが思考を埋め尽くす。
それに置き手紙の字も見ようによっては、脅され恐怖したからこそふにゃふにゃになったのだと見えなくもない……気がしてくるから不思議なものだ。
「いやいや、落ち着け。寝ていたとは言え他人がここに入り好き勝手出来んだろう。それにには体術も仕込んでいるので、暴漢が来たとしても返り討ちにする……複数人に襲われてはそれも役に立たんか……こうしてはいられん!」
置き手紙も効果はなかった。
何分はよく悲劇に見舞われる。
気が付けば攫われていたり瀕死の重傷を負わされたり……本人の気持ちを抉るような出来事に襲われたりと上げだしたら枚挙に遑がない。
またもや何か悲劇に襲われているに違いないと思い込んだ杏寿郎は、縁側の障子を開け放ち頼もしい相棒の姿を探し……見つけるや否や目をカッと開き声を上げた。
「要!を探してくれ!出来るならば神久夜もだ!どちらかの姿を発見次第俺に知らせを!俺は街へ行って聞き込みを行う、頼んだぞ!」
「……?マカセロ」
歯切れの悪い要の様子を気にもとめず、杏寿郎は踵を返して出陣の準備を手早く済ませてしまった。
要はこの屋敷を笑顔で出ていくの姿を見ていたので、なぜ杏寿郎が切羽詰まった様子なのか分からずも、首を傾げながら空へと羽ばたいた。