第3章 第4章 鍛錬と最終選別 243ページ付近
勢いよく立ち上がり杏寿郎の返事を聞かぬまま湯呑みを台所へと取りに行こうとしたが、頭の中が混乱状態な上に火照った体に激しい動悸にみまわれているの足はもつれてしまい、2人の前で盛大に転けた……かと思えばふわりと体が僅かに宙に浮いた。
「急がなくていい。湯呑みなら俺が取りに行くので、気にしなくて大丈夫だ。それより怪我はないか?」
片腕で体を抱え上げた杏寿郎は呆然と自分を見上げて何度も頷くを床へ下ろしてやり、視線を合わせてまだ少し赤い顔に笑顔を向けて頭を撫でる。
「それならばよかった。1人で部屋に戻れるか?歩くのも辛ければ送っていくぞ?」
「ありがとうございます。大丈夫です!ただ少し足を滑らせてしまっただけですので……千寿郎さん、お話聞いてくださってありがとうございます。杏寿郎さん、助けていただきありがとうございます。ではお先に失礼致します。おやすみなさい」
2人の返事を聞くとペコと頭を下げ、まだ少しふらつく足取りでゆっくり自分の部屋へと歩を進めながら、1人硬い決意を胸に抱いた。
(今は最終選別に集中しなくては……無事に帰って来られた時にきちんとお伝えしよう。杏寿郎さんが他の方と婚姻……は悲しいですし)
もちろん杏寿郎はまだの気持ちを知らない。
知っているのは見事に杏寿郎への想いを自覚させた千寿郎だけである。