第16章 再会
「、今年も立派な薩摩芋が取れた。君が隣りに居れば笑顔で抱えきれないほど掘り起こすのだろうな」
いつも杏寿郎の傍らに笑顔で寄り添っていたの姿はない。
8年前に天寿を全うし穏やかに息を引き取ったからだ。
さすがに110歳までは生きれなかったが、なかなかの長寿であった。
「有難いことに曾孫たちまで来てくれて賑やかだったのだぞ?誰が1番大きな芋を掘るのかと張り合っていた。結局、俺が1番大きな芋を掘り起こしたので、曾孫たちが泣いてしまったんだ。よもやよもやだろう?」
杏寿郎が語りかけるのは仏壇ではなく、鬼殺隊時代にが常に身に纏っていた青海波が染め入れられた羽織。
荼毘に付す時は羽織と揃いの着物を着せてやり、向こうでも着替えられるようにと杏寿郎が初めてに贈った曼珠沙華の着物と、花火大会の際に一緒に探し回った浴衣も共に送った。
2人にとって思い出深い物で杏寿郎の手元に残っているのは羽織や日輪刀、小物類だけなのだ。
「曾孫たちとの新しい出会いがあると共に別れも訪れた。つい先日そちらに不死川が旅立ったのだが……会えただろうか?」