第15章 理由
「その鬼よりも鬼みたいな人たちは……どうなったの?お母さんやお父さんを悲しませる人たちは……今も元気にっ、自分たちの寿命を……謳歌してるの?」
笑顔でいることが母の願いであっても、まだ10歳の朱莉にはそれをすぐに実行できるほど大人ではない。
かつて杏寿郎があの屋敷の者たちに抱いていた怒りを感じているのだろう、嗚咽を漏らす朱莉の表情は悲しみと共に憤りも感じ取れる。
「その人たちは……」
「お2人ともどうされましたか?!そんなにも悲しいお顔をして……杏寿郎君、一体何が……」
なんとご本人が紅寿郎を連れて登場してしまった。
何とも絶妙な頃合でやってくるのは煉獄家のお決まりと言う他ない。
杏寿郎は内心焦るも嘘はつかないと互いに暗黙の了解で決まっているので、正直に今の状態になってしまった経緯を口にした。
「俺が不甲斐ないばかりにこの子が疑問を持ってしまってな。君の治癒能力の事と寿命の事を話していたのだ。すまない、悲しいことを思い出させてしまって」
シュンと前髪ごと項垂れる杏寿郎には首を傾げる。
「何を仰いますか!その出来事があったからこそ、今のこの幸せな毎日を過ごせているのですよ!」