第3章 第4章 鍛錬と最終選別 243ページ付近
よりにもよって兄を好いている女子から相談なんてされた日には、どう返答してやればいいか困ってしまうに違いない。
だがは今杏寿郎に抱いている気持ちが思慕の念などと気付いていないので、なんの迷いも戸惑いや恥ずかしさもなく千寿郎の部屋の前に立っている。
「夜分遅くに失礼します。千寿郎さん、いらっしゃいますか?」
「え、さんですか?ちょっと待って下さいね!」
夜にも関わらず千寿郎は嫌な声1つ出さずに襖を笑顔で開いてくれた。
「どうされましたか?」
「あの……こんな時間に申し訳ないなと思ったのですが、折り入ってご相談がございまして」
今までから相談など、雑巾はどこか?やら届いた手紙はどこに置いたらいいか?といったものしかされた事がない千寿郎は目を瞬かせ首を傾げながらも笑顔で頷いてくれた。
「起きていたので大丈夫ですよ。僕の部屋……より居間へ行きましょう。例え僕と言えど夜に女性を部屋に招き入れるのは褒められた行為ではありませんので」
気遣いバッチリである。
きっと……いや、間違いなく自分の兄に気を遣っての言葉なのだろう。
もで夜に千寿郎の部屋へ邪魔するなど恐れ多く、有難くその提案を受け入れ2人で居間へと向かった。