第10章 ※湯けむり旅情
「杏寿郎君、お店がいっぱいです!あのお店は……麦わら細工というものが売っているらしいですよ!後で見ても構いませんか?」
ということで現在、と杏寿郎は初詣の際に花を咲かせた新婚旅行で西の温泉地へとやって来ている。
「麦わら細工か!見たことがないので俺も興味がある!世話になる宿に荷物を預けたらぜひ拝見させてもらおうか。、足元が雪で滑りやすくなっている、俺の腕に掴まっていてくれ」
初めての旅行、初めての温泉地へ杏寿郎と共に赴けたことが嬉しいのだろう。は軽く興奮状態で荷物を片手に、忙しなくキョロキョロと辺りを見回しては興味の引かれるままに立ち並ぶ商店を覗き込んでいた。
先ほどから何度か足をツルツル滑らせ転びかけているの手を取り、杏寿郎は自らの腕に絡ませてやって自分の心の安寧を保たせた。
「ありがとうございます!すごく楽しくてついつい浮き足立ってしまいます!お店も楽しみですが、外湯巡りもお宿もすごく楽しみです!夢みたい!」
屋敷を出る前……それこそ旅行の準備をしている時からずっとがニコニコとしているので、自然と杏寿郎の表情もここ数日ずっと緩みっぱなしである。