第9章 第25章 決戦と喪失 1812~1813ページ
「え……俺の手引っぺがすのは分かるが、何でお狐様腹の上に乗せてんだ?」
杏寿郎の不思議な行動に天元はもちろん皆が頭に疑問符を浮かべ、満足気にのお腹の上で丸まるお狐様との髪を撫でる杏寿郎を交互に見遣った。
「この子は5歳からご両親と引き離されて育った。その影響か眠っている時は人肌が恋しいらしい。温かさが離れるとしがみついてくるので、今はお狐様にその大役を任せたのだ。ほら、お狐様がしっかり拘束されている」
確かにお狐様がによってしっかり拘束されていた。
しかも結構な力で拘束されているので傍から見れば苦しそうに見えるが、そこは神様だからなのか心地よさそうにくつろいでいる。
皆がわいわいとのことや近況を話すのを後目に、お狐様はの頬に肉球を置いて意識を覚醒させた。
「……ん、お狐様?私……」
「夢現でもいいよ。3ヶ月後、きっとお嬢さんにとって素敵なことが起こる。今までたくさん辛いことがあっただろうけど、これからはそれ以上にたくさん素敵なことが起きるからね?だから……お兄さんとずっと笑顔でいてほしい」
小さな呟きはまるで夢の中で聞いているようにフワフワとの耳をくすぐり、何とも幸せな気持ちにさせてくれた。
「もちろんです。お狐様、ここにも遊びに来ますが私たちのお家にも遊びに来て下さい。杏寿郎君と笑顔で待っていますので」
思いがけない嬉しいお誘いにお狐様が大きく頷くとは起き上がって……笑顔でゆっくり皆の輪の中に実を滑り込ませていった。
そこはやはり温かく幸せな空間だった。