第8章 第26章 月と太陽(1874~1878ページ)
は一呼吸置いてから杏寿郎の腕を握りしめていた手を離し、目の前にいる実弥の手を取って両手で包み込んだ。
「それと同じように鬼殺隊も確かにここに息づいていたんだ、それぞれの呼吸の技を使い自らの命を懸けて、自分以外の命を救う尊い人達が確かにいたんだよって舞を通じて私の想いだけでも残したかったんです……実弥お兄さんもここにいたんだよって」
こうした意味合いがあるというのは言葉だけでも舞だけでも……両方であっても年月が過ぎればいずれ人々から忘れ去られる。
それを理解した上では想いだけ……と言ったのだ。
込められた意味が忘れ去られたとしても、自分が名に残した想いは何があろうとなくならないと確信を得て。
(そうやってお前は……残してくれんだなァ。俺も少しは思い上がっていいのか?煉獄の足元にも及ばないだろうが……お前の中で他の奴らより優先順位が高ぇって。奥義名に風が入ってんだから)
柔らかく細められたの柘榴石のような赫い瞳は実弥の心をほんの少し締め付けるも、手の温かさがそれを癒してくれた。
その温かい手を握り返し頬に伸びそうになった手に力を入れ、それを再び頭に乗せるだけにとどめる。