第1章 ※月夜の軌跡 9章
上気した頬、涙で滲んだ瞼に口付けを落とし、緊張から僅かに強ばった体を解していく。
一つまた一つと口付けを落とす度にの体は蕩けるように布団へと沈み込み、杏寿郎を見つめる瞳がとろんと熱を帯びて体温もそれに伴って上がっている。
「が愛らしくて、どうにかなってしまいそうだ」
何の知識も経験も持ち合わせていないの全身が、杏寿郎の口付けや声に反応し、もっとと求めてくる様は気持ちと体を昂らせ、意識が朦朧とするような感覚に陥らせた。
「私も……幸せ過ぎてどうにかなってしまいそうです」
そうして再びの柔く温かな唇が杏寿郎の唇に触れてすぐに離れる。
なんとももどかしい焦らされているような口付けは、杏寿郎の僅かな加虐心に火を灯した。
「あまり煽ってくれるな、余裕がなくなってしまう」
何か言いかけ口を開いたの唇に自らのものを深く落とし、閉じられる前に舌をねじ込み中の熱のこもった舌に絡ませる。
「んん……ん、ふ」
普段聞くことのない艶っぽい声が杏寿郎の全てを刺激し、が逃げてしまわないように背中に回した腕に力を込め、反対の腕をの細い首の下を通し、手で頭を固定した。