第5章 ※ 25章 決戦と喪失の後
「もう既にたくさんのワガママも聞いていただき甘えさせてもらっています。ふぅ……でも1つ大きな願いがあります。とても大きな」
やっと辿り着けた杏寿郎の胸元に頬を当てながら緩慢な動きで杏寿郎の顔を見上げ、少し緊張した面持ちで見つめる。
鬼がいた時はそんな緊張したの面持ちは杏寿郎にとってハラハラさせられるばかりだったが、この平和な世界ではの願いなど嬉しくなるだけだ。
「君の大きな願いはぜひとも叶えてやりたいな。教えてくれるか?」
優しい杏寿郎の表情と声音にも表情を綻ばせ、気持ちを落ち着かせるために深呼吸を1度零し……小さな口を少し震わせながら答えた。
「私ね、杏寿郎君と正式に夫婦になれた後、杏寿郎君との赤ちゃんが欲しいのです。杏寿郎君と私がいたんだって……たくさんの人たちに助けてもらい繋げてもらった命を後世に残したいです。それに……杏寿郎君に似た赤ちゃん、とても可愛らしいと思うんです」
緊張していたはずのは、杏寿郎の小さい姿を想像したのか頬を薄紅色に染めて幸せそうに目元を和らげている。
そんなの姿もそうだが、好いた女子が自分の子供をと望んでくれている事実に杏寿郎の中が幸せで満たされ、つられるように目元を柔らかく細めた。