第2章 被験体
イズミside
「あんた、名前は?」
数日前、病院帰りに道端に倒れていた少女にそう問うと帰ってきた答えは、“被験体019”。
少女の話によるとどこかの実験室でずっと実験されていたらしい。伸びすぎた前髪のせいで少女の顔は鼻と口しか見えなく、服もあちこち血がついている。
「ここは実験室じゃないの?」
すこし怯えの入った声音で聞いてくる少女の頭を撫でてやり、“違う”と言うと“そう”と肩を下ろす。なんの実験をされていた、なんて到底聞くことができない。
「あんた、親は?」
「…知らない。いつの間にかあそこにいたから」
こてんと首を傾げ、“それがどうしたの?”と言ってくる際髪の隙間から覗く瞳は晴れ渡る空のように澄んだ青い瞳をしていた。
「とにかく風呂に入った方がいい。いこう」
青白い手をひいて風呂場へ少女をつれて行き、ついでに髪を切った。
「あんた、こっちの方が可愛いよ」
前髪を大体目の上ぐらいに揃え、後ろの髪を肩までの長さにしてやった。
「あ…あ…」
「ん?」
「…あり、が、とう」