第2章 被験体
「おいっ、見つけたか!?」
「いや、まだだ」
「早くしろ!!“アレ”は、大事な“実験被験体”なのだから」
「わかっているっ!!」
怒鳴り散らすように二人の男が言い合うのが、薄暗い路地には目立っていた。
目を皿にして必死に探す“アレ”と言われた少女、被験体019は壁にもたれかかり荒い息を落ち着かせた。
髪は雨のせいで顔や服にベッタリと引っ付いて、気持ち悪く感じるが、致し方あるまいと息をはく。
大分息が落ち着、回りを見渡して見ると、どうやら自分は気づかぬうちに表通りに出ていたようだ。
皆、傘をさして忙しなく動く“彼等”を見ながらふと思った。“自分は、ここで何をしているのだろうか”、と。
実験が嫌で、耐えきれず逃げてきた。そうだ、自分は逃げてきたのだ。“奴等”が来る前にもっと遠くに逃げなければっ!!
そうわかっていても体は疲労が蓄積されて、立ち上がる事ができない。