第3章 春の悪戯(薬さに)
お互いに仕事が立て込んでいて、会えずに居た久しぶりのデート当日。
"薬研くん、今日会えなくなりました…ごめんなさい"と彼女のメッセージが一つ届いていた。
香澄からの断りが来ると思ってなかったから色々準備していたんだが…その気持ちは不安で満たされたいく…。
会えないほど体調が思わしくないのか?
身体が動かないのか?
声が出せないほどなのか?
いつもなら電話の筈だ…
心配な気持ちで居ても立って要られなくなる。
香澄の家に行く前に熱冷ましシート、風邪薬、スポーツドリンク、料理は出来る自信がないからレトルトの粥など想定出来る範囲内で調達出来る物を予め揃えておく。
来るなって言われたくなくて、いや…"何でも隠す彼女"に頼られたいと思ってしまう男だから。
合鍵を使って香澄の家をそっーと訪問する薬研、寝てるのを起こすのも悪いと思ったからだ…。
ベッドに香澄が寝てるのだろう人の形に膨らみが出来ていた。
『………会いたいよ、薬研くん』
(……寝言か?)
『こんな身体じゃなかったら良かったのに………』
そう言うと声を落とし、泣き出す香澄の声が聞こえてきた…。
「なんで泣いてるんだ!? そんなに痛むのか!?」
驚いた薬研は思わず声が出てしまった。