第3章 春の悪戯(薬さに)
『へっ!? 薬研くん…夢じゃないよね?』
「あぁ…すまない 身体が動かないほど、
声が出せないほどしんどいのかと思ってな…
会いたいんだったら会いに来れるのになんでだ?
泣くほど辛かったんだろう?」
『やだっ…会いたかったけど…
でも……薬研くんこっち来ちゃダメです…!!』
「泣いてる彼女をほっとけると思うか?
……訳を知りたい…駄目か?」
ベッドから出てきそうにない香澄に近づいて行こうとする薬研に香澄は慌てて声をかけた。
『うぅ…待って!訳を言うから!!
花粉症で鼻水は止まらないし、鼻の咬みすぎで肌は荒れるし…薬研くんに会う時は"綺麗な私を見て欲しい"と思ったの…
――嫌われたくなかったの…』
薬研の顔を見ずに布団被ったまま消えそうな声で伝える香澄。
「――どんな香澄でも俺の気持ちは変わらないぜ…好きだ
そっちに行ってもいいか…?」
『―――ダメって言っても聞いてくれない癖に…』
一定の距離を保っていた薬研はベッドに近づいて行き、香澄が覆い被さってる布団を剥ぎ取って
「よく分かってるな…ご褒美なっ」
そう言って香澄の唇を塞ぐ薬研。
『―――っ!!』
「今からたっぷり愛させてもらうか…」
(――私の拒否権は!?)
会いたい時に会えないって言わないようにしないと固く誓った香澄だった。
…完?…