第9章 花言葉(薬さに)
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"今から会えるか?"
(さっきまで電話出来てたのに、情けない…声が震えてしまいそうだったからな…俺、落ち着けよ)
"どこで会えますか…?"
"あの噴水の公園でな…"
"私、近くに居るんで先に待ってますね"
ベゴニアの花束を持ちながら、ベージュのタキシードを身に纏った薬研が香澄の前に立つとゆっくり語り始めた。
「不安を感じとれなくてごめんな?
ベゴニアの花言葉は片想い…その香澄の想いを変えたくてな…
俺と結婚してくれないか…」
『えっ……私なんかでいいの?』
「ベゴニアの花言葉はもう1つあってな、愛の告白してるんだ…
香澄じゃないと駄目なんだ」
『嘘だ…、だって私見たもん…薬研くん…街中で綺麗な女の人と腕組んで歩いてた…
私だからフラれるんだと思ってて…』
「そいつは誤解だな…あれは、乱だぜ…?」
『へぇ!? 電話越しは男の人だったから…どう見ても女の人にしか見えなかったもん…話声は聞かなかったし…』
(薬研くんが私を選んでくれた…嬉しいよ…)
香澄の瞳から一筋の涙が…そんな香澄を抱きしめて薬研は言葉を紡ぐ。
「俺の名前を呼んでくれよ、香澄」
『薬研…藤四郎…』
「ずっと一緒に居ような、離してやらない…」
『ねぇ…私の名前を呼んで…』
「香澄…愛してる」
『私も薬研の事を愛してる…』
香澄の涙を指で拭い取り、深い口付けを交わすと…四角い箱から指輪を取り出して互いの左薬指へと填めていき…永遠を誓う…。
…完…