第30章 いつだって突然、恋に落ちるのは(後家さに)
(後家side)
入学してから毎日のようにずっと傍に居てた彼女がぱったりと姿を見せなくなった。
彼女の透き通る明るい声で周囲を包み込む空気が
こっちの意図まで見透かしてるような眼差しが
少し甘い香りを漂わせる長い綺麗な黒い髪が
『好き』とストレートに自分の感情をぶつけてくれる、その行動力も凄くて圧倒された
ただ数日なのにずっと当たり前と思ってた彼女の存在がいつの間にか特別に変わっていたんだ
食堂でもおつうと食べながらこの数日間は無意識に彼女の姿を探していた。
最初は彼女が来なくなった理由が分からなくて、おつうがふっと思い出したように口にした。
「原因、俺かも…あの日眠くってさ、代わりにごっちんを探しに行ってたんだ」
「おつう、それめちゃ重要な事じゃない!?」
だとしたら彼女がボクの事を避ける理由は分かったあの告白されてた所を見ていたから、ボクの言葉を聞いてしまったから。
ボクと同じように頭の良い彼女は色んな選択肢があって、その自由な時間を奪うのは駄目だと彼女の好意は勿体ないと言い聞かせてた。
そんな彼女以外の女の子にボクへ向けられる好意は何度来られても困るから嫌がられるだろう言葉を投げかけ突き放した…
ボクに向いてる恋愛感情を他の誰かに向いてくれたらいいと思った。
「ごっちん、どうする??このまま諦める?」
「ボクがそんな事で諦めると?」
「まぁ、そんな事ないよね…
南雲さんに如月さんが居そうところ聞く?」
「そんな事しなくても分かるよ」
ずっと追いかけられてたんだ
ボクが彼女だったらどうするかを考えたら一つしかないんだ
そして今になってふっと思い出したのは
初めて出会った桜の木の下に彼女は必ず来ると謎の自信があった
いつまでも待ち続ける
"絶対に振り向かせてみせる"
だって恋に落ちるのは突然なんだから
ボクがキミに恋をしたように
(終)