第23章 ふたつの恋のシグナル・前編(宗さに・薬さに)
『須美佳ちゃんいいなぁ…あたしも夜で終われるように頑張る…』
「香澄ちゃんは香澄ちゃんのペースがあるのに…でも私の方が油絵の人物画で躓いちゃうから焦らなくてもいいんじゃない…??」
『でも水彩画で時間かかっちゃうし…出来るだけ早め早めに構えとかないと…』
「香澄ちゃんなら出来るよ、大丈夫だからね」
『ありがとう須美佳ちゃんー頑張れそう!!』
さっきまでの不安そうな顔をしていた香澄がふんわり笑うと須美佳も少し微笑み返した。
居間で談笑しながら過ごしていると、17時ごろにキッチンへ向かうとカウンターには人数分の食事がお盆の上に置かれていて居間のテーブルに運ぶ。
[献立:しょうが焼き・サラダ・豚汁・ご飯]を食べ始める。
18時30分ごろ…アトリエへ向かう宗三と香澄を見送る。
デッサンを終えてる須美佳と薬研はアトリエへ向かう事なく、居間で話をしていた。
「あの薬研くん…明日なんですけどアトリエでモデルして貰ってもいいですか…??」
「えっ??それはセミヌードのか…??」
突然須美佳にモデルと問われて、薬研は少し言いにくそう聞き返す。
自分の聞き方が悪かった事をすぐに理解した須美佳は慌てながら返す。
「ちっ、違います…!
あの、左文字先生は風景画でいいって言ってましたけど…水彩画は人物画で書こうかなと思いまして…服は着てて大丈夫なモデルに薬研くんを描けたらいいなと思ったんです」
「そんな焦らなくてもいい…勘違いして悪いな…
モデルはいいぜ…勉強しなくてすむしな」
「薬研くん…勉強も大事ですよ
ありがとうございます、明日よろしくお願いします」
勉強よりモデルの方を選んだ薬研の言葉に少し場が和んだ事に安心した。
宗三と香澄の帰りを一時間ほど待ったが帰ってくる気配がないので、須美佳と薬研は居間から部屋へ戻り早めの寝支度をする。
…俺の方が焦ってる…
名前…宗三の弟も如月先輩の弟も下の名前を呼んでた事に…そんな対象じゃない事ぐらい分かってるさ…頭の中では…俺の事も弟ぐらいにしか思ってないのか…??
~中編へ続く~