第22章 ちいさな初恋と潮騒と(北谷菜さに)
さっきまでの泣き顔やおどろいた顔がくるくると表情かえる姿が可愛いらしくて…こんな小さな子に恋の感情はないだろうぉと思いながら…目的地の海の家にゆっくり歩いていった。
せっかく会えた親御さんの前で、おれを必要として泣いてる姿が愛らしいと思った…泣くのをやめてくれたらと思って言った言葉を素直に受け止める香澄ちゃんをみて、守りたいって想いに…これが初恋だと気づいた。
香澄ちゃんと別れたあとすぐに左手の小指に二つの指輪を身につけていた。
約束を忘れたくない、会ったらすぐにでも渡したくて…。
どうしてか会いに来てくれない…嫌われたのか…?
連絡先を交換した訳でもなく…おれは待ってるだけしかできない…。
それから八年が過ぎて、おれも二十六歳になった。
おじぃが閉めた海の家を内地から人を呼んで再開するって話してた。
気になって様子を伺うと見間違えるはずもない…香澄ちゃんが居る…。
でも会いに来る事がなく一日が過ぎて完全に臆病になった。
海の家に居ても役に立たないほどヘコみようで…千代金丸と治金丸が居ればいいだろうと思って抜け出してしまった…。
香澄ちゃんと出会った場所、別れを切り出されるにしてもここがいいと思った…。
そして目の前に現れたキミにおれの想いを伝える時…初恋よ、届けと…。
***
【オマケ】
海の家に着くと香澄が居なくても大丈夫なくらい手際よくこなしている千代金丸と治金丸が居て、帰ってきた二人を見ながら。
「その様子だと…上手くいったみたいだね、可愛い妹ができた訳だね」
「ちぃ兄と一緒になるわけだから…オレの姉(ねぇねぇ)になる??」
「……おれの嫁にベタベタしないでね」
『……北谷菜くんそれはちょっと恥ずかしい』
「会えなかった分…当然の事さ
来年は二人で過ごそうね」
『………うん』