第17章 春の悪戯(歌さに)
貴方との出会いはそう、赤色や黄色が彩る紅葉を楽しむ…私が一番好きな季節…その落ちた枯れ葉が道端で絨毯のように敷き詰められる光景も美しくて好き…。
ベンチで1人ゆっくりとした時間の流れを肌で感じ…趣味の写生に手元のスケッチブックに鉛筆を夢中で走らせる。
一つの人影が香澄の方へと近付いてる事も気づかずに…
「お隣に座らせてもらっても大丈夫かな…??」
『はい、大丈夫ですよ』
「それは…?」
『あの…下手なのであまり見られると恥ずかしいです…』
覗き込まれると慌てて胸にスケッチブックを押しつけて見えないように隠そうとする香澄。
「この美しい絵が…恥ずかしいなんて勿体ない…」
『そんな事言われたのは初めてです…ありがとうございます』
「きみの写ってる風景に僕が隣に居る事は許されないかな…?」
『…えっ??』
「僕は歌仙兼定…こんな突然変な事を言って気味悪いかもしれないけど…初めて出会ったきみが好きだと思ったんだ…」
やんわりと何処か気恥ずかしそうな顔をしながら嘘を付いてるようには見えない瞳に…その貴方の告白に私の答えは戸惑いながらも断るのが惜しいと思案に暮れる。
『あの歌仙さん…私も貴方の事に興味があります…私は如月香澄と言います』
また会いたい…喋りたい…知りたいと…今思い返せば一目惚れだったのかな…?
知り合って間もないがその時間を埋めるように…休日に出会った公園のベンチで他愛のない話す時間…互いの好きな物…好きな季節…好きな場所…を以前なかったものが何年前から続いている当たり前のような感覚に変わっていく。
二人寄り添いながら月日はあっという間に出会いの秋から冬になり春が来た。