第26章 相澤消太は恋をする
【相澤消太side】
幻想を見つけたとき、あいつは案の定路上で眠っていた。
声をかけても応答せず、仕方なく自宅へ連れ帰ることにした。
久しぶりにメディア越しではない幻想を見て、
綺麗だと思ってしまった。
高校時代の少女らしさは消え、女性らしくなり
抱き寄せた顔には淡い化粧がされていた。
ああ、幻想は大人になったのだ。
とても綺麗になった。
そんな気持ちを抑えながら、俺はベッドを幻想に譲り
風呂場で夜を明かした。
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目を覚ました幻想に昨日の経緯を伝えると、とても動揺していた。
しばらく話をしていると俺は幻想に、なぜ電話したのかと詰め寄られた。
「…話が、したかった」
そう言うと幻想はとても驚いていた。
なぜ話がしたかったのか、何を話したかったのか
確かな理由は俺にも分からない。
ただ、声が聴きたかった。
会いたいと思った。
もう一度顔を見たかった。
話を聞けば感情は溢れ出る
姿を見れば、痛い程胸が締め付けられた。
俺は、これが恋だということを
最近理解した。
「……相澤先生、わたしもう生徒じゃないんです。それに、昨日で20歳になったんですよ」
そう訴える幻想はとても真剣な顔をしていた。
分かっている。
お前があの時の少女とは違うことくらいよくわかっている。
俺は幻想に気付かれないように深呼吸をして、覚悟を決めた。
「……事件の後、お前は俺の事を好きだと言った。覚えているか」
そう聞くと幻想は悲しげな顔をして頷いた。
ああ、あの時は言ってやれなかった。
「……あの告白の返事は、まだしていいのか」
そう聞くと幻想はきょとんとした顔をした。
「…返事をする権利は、まだあるのかと聞いてる」
俺は幻想の目を見てそう問いかけた。