第21章 相澤消太は吞み込んでしまう
【相澤消太side】
あれから俺は予想通り1年A組の担任を降りるという形で責任を取ることになった。
生徒たちは学校側に相当抗議したようだが、
校長になだめられ、事態は落ち着いていった。
しばらくして幻想が病院から退院すると、
あいつの目が無事だということを耳にして、俺は人知れず胸をなでおろしていた。
あの事件の翌日、マイクは俺に過去の事件の記事を手渡してきた。
俺は自力で記憶を取り戻していたが、記事には凄惨な事件の内容が事細かく書かれており、あの事件を俺はよりはっきりと思い出した。
現在と過去の点が、線で繋がり。
俺は幻想の気持ちを痛いほど理解することができた。
気づいてしまうともう取り返しのつかないそれを
抑え込むことに必死になっていた。
深く、青い、透き通った目を思い出す度
俺はその感情を吞み込んだ。
幻想の話が職員室で出る度
自分の興味に蓋をした。
生徒から緑谷と幻想が付き合ったと聞いたとき
湧き上がる何かに気付かないふりをした。
校内であいつの姿を見かける度
自分の心に嘘をついた。
揺れる黒髪を、照れながら笑う顔を
俺を好きだという声を
忘れてしまいたいと思うようになっていた。
教師として、大人として。
俺はどうしても幻想の言葉に
答えることはできなかった。