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相澤消太は不健全に恋をする

第19章 相澤消太は思い出す


【相澤消太side】

事件後、幻想は病院に搬送された。
緊急手術の末、一命を取りとめたが五日間目を覚まさなかった。

警察の話によると、
犯人は幻想を連れ去ったあと祭り会場近くの保育園へ侵入、
子ども達や保育士共々殺そうとしたらしい。


しかし、幻想以外は全員無傷で保護された。

犯人の意識を幻想の個性により混乱させることで、
その隙に全員を外へ避難させたらしい。


幻想は混乱し暴れる犯人を制止する為、ヒーロー到着まで一人でその場を抑え
犯人により複数の刺し傷、大怪我を負った。


そして個性を自身の限界以上に使用したことで
失明している可能性もあるとのことだった。




俺があいつを見つけたのは緑谷が到着したすぐ後だった。
傷だらけで、閉じられた瞼からは血が滲んでいた。


布で身体を包まれた幻想を見て俺は過去の情景を思い出した。



『……助けに来てくれた人?』

『そうなんだ…ありがとう』






幻想叶は…過去に事件の時、俺が助けた少女だった。


それに気づいた瞬間
あの押し寄せていた違和感も
胸に沸く気持ち悪さも

嘘のように綺麗に消えていった




「個性を使われていたのか」
気持ちが落ち着くのと同時に理解した



あいつはまた、理不尽に傷つけられたのか

前は心を、今回は身体を
俺はまた救えないのか



きっとあいつは俺を目指して雄英に来た
そのせいであいつは生死を彷徨う状況にいる



やはり、名前など知らせるべきではなかった
あいつはヒーローを目指すべきではなかったんだ


そう考え、握られた拳に力がこもっていく。


「……じゃあ、どうしてあいつは改ざんしてまで俺に忘れられようとしたんだ。」






俺は試験の日に幻想に偶然出会ったことを思い出した。



『なんで、そんなこと言うんですか。』


俺がヒーローはやめておけと言うと
あいつは声を震わせて俺にそう言った。



俺なりの優しさだと思っていた。
ヒーローになれば危険は遠ざけられない、
目の前の幻想叶に過去の傷ついた幻想叶を重ねていた。




だけど違ったんだな
あいつは覚悟を決めてヒーローを目指していた
あの事件を乗り越えて、自分もヒーローになろうと


決して生半可な覚悟ではなかったんだ






そこまで考えて、自分の目頭が熱くなっているのを感じた。
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