第6章 相澤消太は改ざんされているⅡ
【相澤消太side】
あの事件はよく覚えている。
敵(ヴィラン)が帰宅中の少女を誘拐。
少女は四日間見つからず、大きなニュースになった。
少女が行方不明になって五日目、俺は誘拐犯の居場所をつかんだ。
人数は二人、敵の個性も俺の個性で十分に対処できるものだった。
俺が少女を見つけたとき、彼女は何も着ていなかった。
一目見ただけでどれだけ酷い事をさせられたのか理解できるほど、脱力して動けない状態だった。
なんてことを…
なんて酷い事をしたんだ…
俺が助けに来たというと彼女は笑顔で「ありがとう」といった。
透き通るような綺麗な目だった。
お礼を言われることなどない。
なぜもっと早く来なかったのかと責められてもよかった。
彼女は一人でこの仕打ちに耐えていたんだ。
「よくがんばったな」
そうして彼女は警察に引き渡し、任務は終わった。
名前は知らせないように促した。
彼女を本当の恐怖から救うことができなかった。
俺のヒーロー活動の中でも記憶に残る事件となった。
後の警察の調査では少女の個性を悪用することが目的の誘拐であったと判明した。
誘拐犯は依頼という形で少女を誘拐し、自由に操れるようになるまで暴行を加えた。
彼女の個性は“記憶を改ざんする”こと。
全国でもそういない珍しい個性だった。
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「あの時の…」
気づいた瞬間に全身に鳥肌が立った。
なぜ、雄英にいるんだ。
名前は伝えるなと警察には施したはず。
「俺のヒーロー名知ってたな、あいつ」
俺がいると知ってきたのか…?
まさか。