第4章 代償
『好きと嫌いは、実はおんなじ気持ちなんだよ』
別れ際、橘さんが言った言葉が脳裏を掠める。
『相手を思う想いの強さは、たぶん一緒なんだと思う』
一緒。
一緒?
嫌いな気持ちがあるから、好きがあるんだ。
好きの対角線にあるのはきっと、"無関心"。
嫌いじゃ、ない。
「やっと、認めた」
「ぇ」
「やっとそれ、認めたなおまえ」
見下ろしながら、蓮の掌が頭を撫でて。
優しく、黒曜石の瞳が揺れた。
「……っ?」
笑っ………ッッ。
「あんな顔、しといて嫌いとか言われても俺には告白ってるようにしか見えねえし」
「な………っ」
に、言って……っ
「自惚れんのも………っ」
「しねえよ」
掌を顔へと伸ばして。
蓮から顔を隠す、けど。
「いい加減になんてしない」
顔へと伸ばした両手は簡単に奪われて。
真っ赤になった醜態を、蓮の眼前へと晒す。
「いくらでも自惚れてやるよ。おまえ、俺なしで生きてけると思ってんの」
「…………ッッ」
この、顔……っ
目。
挑戦的に揺れる、黒曜石。
自信たっぷりに細められた瞳には、見覚えがある。
この顔には、見覚えがある。
あたし。
この、目に。
この表情に。
惚れたんだ。
蓮のこの、自信に。
だけど。
気付かれたくなくて顔を横へとわざと視線を反らした。
「………前のがもっと可愛げあったんじゃねえの、おまえ」
「余計な、お世話……っ」
軽く握られただけだった両手を振りほどいて、起き上がる。
けど。
「言ったろ、逃がさねえって」
頭上で両手が捕まえられたまま、ベッドへと押し戻された。
「何……っ」
「男の部屋にこんな時間に何しにきたの、おまえ」
「はぁ?」
「愛の告白でもしに来た?」
「そんなわけないでしょ!!」
「だったら、黙って抱かれろよ」
「…………っ」
耳の中にねじ込むように入り込んだ舌が、また、体の芯を溶かしていく。
「……………今さら…………っ、散々あたしの気持ち無視して抱き潰したくせに」
蓮の舌が、手が、触れたところから熱が産まれてきて。
一気に体温が沸点までたどり着いた。