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ひと匙だけじゃ物足りない

第3章 おねがい女装の代償


顔の近くに唇を寄せられ、彼の艶っぽい声が耳を刺激する。彼からの可愛いは心臓に悪い。誰からの褒め言葉よりも、心臓の音が速くなる。

「んぅっ♡あ、もう、いっちゃ…♡かも、あぁんっんぅ♡」
「ン、じゃあちょっと早くしよっカ」
「ああぁっ♡んっ、あ、だめっ♡おかしく、なっちゃああぁっ♡」
「…大丈夫、気持ちよくなるだけっ……っほんとボクより君の方が何倍も可愛いのに」

彼の首に腕を回しながら肩に顔を埋める。お互いの肌が合わさる音と、よろしくない水音が部屋に響いて何だか余計に敏感になる。
奥のいい所を何度も刺激されて、もう限界に近かった。

「あ、あぁんっ♡も、いっ……♡」
「ボクも、一緒にいこっかっ」

私の手を取ってぎゅっと彼は恋人繋ぎをする。意識が朦朧とする中、早く達してしまいたいのか自然と私もゆるゆると腰を動かしてしまっていたらしい。腰の動きが可愛いなんて褒められてしまって、気持ち良さが加速した。

「んぁっ、ああ♡いっ、く…あ、あああっ♡♡あっ、ああぁ〜っ!!♡♡」

ソファーがぎしりと音を立てて沈む。ふたりの汗でベタついた肌は気持ち悪い筈なのに何故かそうとは思えない。どちらかといえば愛おしいに近かった。
彼に体重を預けながら息をある程度整えて顔を見つめる。せっかく可愛くしたのに汗で髪が張り付いていて、少しもったいない。けれどこれはこれで色っぽいから困るなぁ。

「フフ、那乃花ちゃん顔がぐちゃぐちゃ。お化粧も崩れちゃってるシ」
「夏目くんこそ……はぁ…疲れちゃった」
「このまま寝たら風邪引くヨ。シャワー浴びないト」

ほんとはこのまますぐにでも寝たいくらいだるいけど確かに彼の言う通り。シャワーくらいは浴びないと、と思いながら夏目くんの上から降りようとするも上手く腰が上がらない。体が鉛のように重いからか、その姿を見て、彼はきょとんとした表情をした後可愛らしく笑った。
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