第4章 甘い痛みが知らせたもの
12月24日。
元の世界ではクリスマス本番の日だ。何もできないのに、朝起きた時は、そわそわした。本当だったら、今ごろ私はクリスマスケーキの仕上げをしている殺人的に忙しい日になるはずだった。
でも、今朝の私は、朝の鍛錬を終えた道着姿の煉獄さんに温かいお茶を出して、縁側に座ってお話ししている。
煉獄さんは、全集中の呼吸と常中について教えてくれた。
「まず、肺を大きく強くするんだ。酸素の血中濃度を上げるためなんだが、体の隅々の細胞まで酸素が行き渡るように、長い呼吸を意識する。
そうだな、鼻から深く息を吸って、胸や鎖骨を膨らませる、と言えば分かりやすいだろうか。
これは空気の薄い高地で鍛えるのも効果があるんだ。瓢箪を膨らませて地道に鍛錬もする。習得すれば身体能力や自然治癒力も劇的に高まる。これを24時間続けるんだ。」
煉獄さんは私にも分かりやすいように説明してくれた。
そして、柱には継子という、愛弟子を取る事ができるとも教えてくれた。
「要も、その気があれば俺の継子になれる!」
煉獄さんはそう言うとお茶を飲んだ。
「継子になったら、煉獄さんがさっきやってたみたいな、モーレツな訓練をやるって事ですか⁈」
そんな気はしたけど一応聞いてみる。
煉獄さんはお茶の器を茶托にそっと置きながら、いつもの明るい笑顔で言う。
「そうだ!やる気さえあれば俺が鍛える。」
「それって、私にも才能があるって事ですか?」
ちょっぴり期待した。鬼殺隊はやっぱり、めちゃくちゃかっこいい。
すると、煉獄さんの瞳に悪戯っぽい、艶めきが宿ったのが見えた。
「要は、よく廊下で滑るから、体幹がないのかもしれないな。少し鍛えれば君も良い線行くと俺は見ている。」
「鍛えるって具体的にどういう事するんです?」
「朝から晩まで一緒にいて…」
と煉獄さんが言いかけた時に、上空から一羽の黒い鴉が飛んで来て、煉獄さんが出した腕に止まった。
鎹鴉だ!!炭治郎君のとこにくる、鴉の仲間だ!!
私は間近で見る鴉にワクワクした。
煉獄さんの鎹鴉は初めて見た!凛として美しい。
「要! !」
大きな声で名前を呼ばれて私はお茶をこぼしながら跳ねた。
「は、はいっ!」
「カア!」
鴉と私の声は同時だった。
へっ?同じ名前?
鎹鴉も私を不思議そうに見ている。