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テっちゃんといっしょ!

第5章 辛勝後の艦長と整備員


今回の戦闘はかなり大きな被害を受けた。結論だけ言えば勝利を収めたが死亡者、重症者がいなかったのが奇跡のようだ。
アラドを筆頭に撃墜されたものもおり、格納庫も戦場と化していた。
しかしは艦長に呼び出されブリーフィングルームへ走っていた。
「艦長、入ります」
一応断りを入れてから中に入る。
は整備班長ではないので報告の義務はない。けれども艦長の名前で呼ばれるのも珍しい。
これは、と察したはそのまま奥の椅子に座り込んでいるテツヤの前に立った。
「テっちゃん、凹んでるの?」
俯いていると流石に顔が見えない。なのでいつもよりもぼさぼさの頭をぽんぽんと撫でた。
テツヤは長身に似合わず繊細だ。いつも『これがダイテツ艦長だったら』とか『リーだったら』とか考えている。
からすれば、テツヤにはテツヤの優れた面があるのだし、リーにも最後には勝ったのだし、20以上年上で経験もあるダイテツと比べても仕方がないと思うのだが、死者が出ても仕方がないでは済まされない。艦長はそういう責任を負っている。
「テっちゃんがベストを尽くしたから誰も死ななかったんだよ。 機体だって三徹くらいすればこれまで以上に強くなるよ!」
「……健康に悪いから少しは寝なさい」
そこは突っ込むんだ、と内心思いつつも撫で続ける。
しかしテツヤは精神的脆さを指揮に影響させない。艦長のときとプライベートのときでは別人、とも言う。
に、しても事後処理の途中でこれだけ弱るのも珍しい。
「本当にヒヤリとする場面が何度かあったんだ。 機体の硬さに助けられた……整備班のお陰だな」
「格納庫傍に被弾した時はこっちもひっくり返ったけどね。 多分膝にアザできたよー」
「……すまん」
その声で一番それに凹んでいて、そしてその事実にも凹んでいるのだろうと当たりをつけた。つくづく生真面目な男である。
そこが好きなのだけれども。
「だからテっちゃんのせいじゃないって。 その程度で済んだんだから万々歳。 ほら、シャキっとしなさい!」
決して柔らかくはない頬を軽く両手で叩いて顔を上げさせる。
「私たちは艦長がテツヤだから命賭けてついていけるんだよ。 だからテツヤももっと自分を信じて」
「……うむ」
求めていた強い言葉に心身共に立ち上がりながら後で膝を舐めてやろうと心に決めたテツヤだった。
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