第4章 紛らわしい
「……テっちゃんって時々暴走するよね」
「……面目ない」
食堂で珍しく怒っている様子のと反省している様子のテツヤ。年の差も立場の差も体格の差も何もかも激しい二人であるが、れっきとした、しかも艦公認の恋人同士である。
その二人がこんな風に対峙しているのは珍しい。
大体はがテツヤにベタベタしている(そしてテツヤも満更ではない)か、艦長と整備員としてそれぞれ仕事をしているかである。
これは何か面白いことがあったぞとリオやクスハは興味津々である。
「そりゃあ私も本気でって言ったけど……あれは反則だよ!」
「まさか俺も出るとは……」
「私だってあんな大きいのがあるとは思わなかったよ!」
「がしたんじゃないのか?」
「違います! もう……腰抜けたかと思ったよ。」
「しかし男としてあれは我慢できないものなのだ!」
「テっちゃんだけだと思うけど……」
「いや! エイタもきっと好きだ!」
「そうかもしれないけどー」
思わぬところで触れられたエイタが酷く動揺して周囲を見回し何故か弁明しているが二人は気づかない。
「何の話だ?」
空気の読めないマサキが二匹の猫を従えてやってきた。
パッと見上げたがわざとらしく頬を膨らませる。
「あのねマサキ! パイロット訓練用のシミュレーターを調整したからテっちゃんとテストプレイしてみたの!」
「艦長と整備員で?」
「新しい機体と装備がきちんと使用できるか確認できれば良かったからちょうど一緒にいたテっちゃんに遊びのつもりで頼んだんだけど……そしたらテっちゃんってばトロニウム・バスターキャノンを使ったんだよ!?」
「つい癖で……すまん」
「もーあんな恐怖体験二度とないよ!」
まあそれは確かに年端も行かない、ましてパイロットではない少女には怖かっただろう。そして恐らくテツヤはノリノリで撃ったのだろう、普段の言動からして。
「じゃあさっきまでの会話は!?」
思わず立ち上がったリオには首を傾けた。
「さっきまでの? シミュレーターでの模擬戦の話だよ?」
テツヤも同意する。周囲はどっと脱力した。
「もおおお紛らわしい会話はやめてよ!!」
リオの怒りに困惑する二人を置いて周囲は解散を決め込んだ。