第1章 空前絶後
彼等が去ってから急に肩の力が抜け、無意識に気を張っていたことに気付く。
(お腹すいたけど、疲れたし少し仮眠しよ)
こっちへ来てからは基本動いてばかりで些とも休めていないせいか眠気のピークを迎え、押し入れから布団をひいて横になった途端意識が落ちた。
(…んん、今何時だろ)
窓から射し込む日が橙色からしてもう夕刻間近だろう。
「あ、ちゃん起きた?部屋入ってもいいかな」
山本シナ先生が小袖や櫛など日常生活で最低限必要な物を持って来てくれた。
「ほんと…何から何までありがとうございます」
「いいのよ、気にしないで。周りはまだ貴方の事疑ってる人も多いけど、私やくの一教室の子達は安心して欲しいわ」
“忍として簡単に信じてはダメだろうけど、私の生徒を助けてくれたし、私はあなたを敵と見ないわ”
この言葉にどれほど救われただろうか。再度シナ先生に頭を下げた。
「明日は朝食の時間帯には起きてて欲しいの。学園長先生がその時間帯に生徒にあなたの事を紹介するわ」
「分かりました」
去り際にシナ先生がウィンクしたかと思えば“ちゃんには週に一回私の代わりに実技の授業を1日して貰う日があるからよろしくね”と。学園長先生&シナ先生の思いつきらしい。
(なんとまあここでも教える立場になるとは)
もちろん断れる立場でも無ければ断る気もさらさらない。
「私でよければぜひ、よろしくお願いします」