第10章 素直な気持ち|火神大我
バシャン…パシャ…───
ポタポタと雫を垂らしながら
ぼや〜っと周りを見渡すが、置いていたタオルが無い。
『よかったら使って…?』
火神「悪ぃ…」
タオルで拭きながら、話しかけて来た相手を見やると
『毎日お疲れ様…』
火神「あぁ。…なぁ俺、先に帰ってろって言ったよな」
『…ごめんなさい』
火神「別にお…」
『分かってる。ごめんねっ…もう帰るからっ…』
そう言うと舞は走って行った。
火神「アイツ…こんな暗いのに1人で帰る気かよ」
今日は委員、早く終わんだろ?
だったら一緒に帰ろうぜ!と言われ待っていたのだった。
『はぁ…はぁ…』
こんな暗がりで帰るのは火神と付き合って以来無かった。
『ちょっと…怖いかも…』
蒼井「桜田さんっ!」
『…あ、蒼井くん!』
蒼井「よかったら一緒に帰らない?暗いしさ、家まで送るよ!」
『そんな、悪いよ…』
蒼井「俺が送るって言ってんの。危ないし?…ってかさ」
『なに?』
蒼井「なんでこんなに遅いの?委員とか?」
『…うん。』
蒼井「あ、今…嘘付いたでしょ…」
『火神くんを待ってたの…。でも夢中になって忘れてたみたいで…』
蒼井「…にしても酷くね?」
『練習しなきゃ次の試合、どうなるかわかんないって言ってて、でも火神くん私のこと気にかけてくれたみたいで…』
蒼井「でも忘れてんじゃん」
『…いいの。気にかけてくれたことが嬉しいから…』
火神「はぁっ…はぁ…、舞…っ」
やっべー…帰ってろってなんだよ。約束したの俺じゃねぇか!やらかした…つか、アイツ何処に居んだよ…
火神「…!あれ、舞か…隣に居んの、誰だ?」
火神の目に映っていたのは、舞と蒼井の姿だった。
火神「アイツは…」
──────────
蒼井「ねえ君…」
火神「あ?誰だお前…」
蒼井「テニス部キャプテンの蒼井…って知らない?」
火神「聞いた事はある。…で、何だよ」
蒼井「つれないなぁ〜、君。」
火神「そんな事言いに来たわけじゃないだろ…」
蒼井「率直に言おう。桜田さんと別れてくれないかな?」
火神「…は?」
蒼井「彼女は俺がもらう。」
火神「何だと…」