第40章 scene ■
「悟にずっと、言えてなかったことがあるの…」
「うん?なに?」
レイは、まっすぐと碧眼を見つめて
少しはにかんだ。
「あのとき、
私を引き止めてくれて、ありがとう」
五条の目が見開かれる。
心の中で
認めてしまった。
その言葉を、
ずっと聞きたかったのだと。
何も言えなくなって、
ただ抱き締めた。
嘘でもいいから肯定してほしかった、
たった1人のその存在を。
「ふ…今日はよく抱きつくね」
「…ん。」
レイは、胸もとの銀髪に目を細める。
「ね、さっきの続きだけど…」
"僕も、レイが女神様に見えた時って、その日のことだよ"
"…えっ…"
"僕とレイ、同じ日のこと言ってたみたいだね"
"そう…みたいね…"
「それって、あの夏の日…だよね。
ふふっ…懐かしいなぁ…」
「うん。ふっ…」
五条もくすくすと笑いながら仰向けになり天井を見上げる。
あの時の夜空が
鮮明に蘇ってくる感じがした。