第39章 dignity ■
「珍しいよね、恵が僕に稽古頼むなんて。
悠仁に追い越されて焦ったー?」
「……まぁ、背に腹はかえられませんから。」
「そんなに嫌〜?僕に頼るの。」
呆れたように言いながら五条は頭を搔く。
「恵はさぁ、実力もポテンシャルも悠仁と遜色ないと思ってんだよね。あとは意識の問題だと思うよ?
恵…本気の出し方知らないでしょ?」
「はあ?俺が本気でやってないって言うんですか?」
伏黒は鋭く五条を睨んだ。
五条は何食わぬ顔で伏黒を見下ろしている。
「やってないんじゃなくてできてないんだよ。
例えばさあ、この前の野球。なんで送りバントしたの。自分がアウトになっても野薔薇の塁を進めたかった?それはご立派。
でも悠仁や僕なら常にホームランを狙う。
…バントが悪いって言ってんじゃないよ?野球は団体競技。それぞれに役割があるからね。でも呪術師はあくまで個人競技。」
「…他の術師との連携は大事でしょ。」
「まぁねっ。でも周りに味方が何人いようと……」
五条は言いながら伏黒の前へしゃがみ込んだ。