第5章 possession
「レイさーん!」
あれから2日後。
そう声をかけてきたのは後輩の灰原雄。
その隣には彼と同期の七海健人がいる。
2人とも、夏油をとてもよく慕っている高専の1年だ。
とくに灰原は夏油のことを先輩というよりも兄貴のように慕い、深く尊敬しているのは誰の目にも明らかだった。
「お土産ありがとうございました〜!なかなかお会い出来なくて焦りましたよー!」
「あー全然いいよ。」
「ところで夏油さん知りませんかー?」
とても童顔な彼はキョロキョロすると本当に子供のようで可愛らしい。
つい顔が綻んでしまった。
「傑は多分、もう自室に戻ったんじゃない?こんな時間だし。」
時計の針は20時を指している。
風呂上がりのレイも部屋に戻るか、傑の部屋に行ってみようか迷っていたところだ。
「そうですかぁ。…あれ?レイさん
首…虫刺されぇ??あ、呪霊にやられた系っすか?」
そう言って首筋を目を丸くして見つめる灰原に、一気に顔が熱くなり慌てて手でアザを隠した。
2日たってもこれはまだ消えていない。
察するに、相当強く吸われた…っぽい。
「ん、そ、そう。こないだの任務でね…」
「大丈夫ですかー?家入さんに反転術式で治してもらえばいいのに〜」
硝子は反転術式の達人だ。
本来、負のエネルギーである呪力を掛け合わせることで正のエネルギーを生み出す高等な呪力操作。この正のエネルギーによって、人間を治癒することができる。
反転術式の使い手は貴重で、さらに他人の治癒を出来る使い手は高専に於いても希少な人材である。