第34章 surround ■ 【番外編】
だからおいらはみんなとひたすら約束をしてたのさ。
それが唯一、おいらにできることだった。
"約束"はもちろん守られればそれに越したことはない。
でもただ意識させるだけでも充分だと思っていた。
あえて約束させることによっての一種の"縛り"
頭の片隅にそれがあるだけで、人間の行動は確実にそこに向かって軌道をずらしていく。
傑が言うように、"約束は破ることを想定して交わすもの"なのだとしてもだ。
"レイに悲し涙を流させない。
もしものことがあったら精一杯支えてやる。"
みんな当たり前だというように頷いた。
おいらは慰めるのが得意じゃないし、
人間の弱さに寄り添えない。
むしろそんな奴を見ると、めそめそすんな弱虫!って殴ってやりたくなるんだ。
で、やっぱ初めから、おいらにはわかってた。
というか、傑以外はみんなわかってたかもしれねぇ。
(第8章 unexpected)
「おいらもうわかってる。レイが涙を流して感情炸裂するときは、多分ひとつしかない。」
「だな…俺もわかってる。」
「そしたらお前は空になってやれよ。万が一の話だが。」
「もう空のつもりだよ」
「まだまだだね。レイは本当に上を見てない。
見てるふりして見てねーんだ。」
「1つ約束してくれクマ。」
突然真剣になる五条に、クマは口を閉ざす。
「レイに悲し涙だけは流させない努力をするって。」
「あ?お前さっきと言ってること違くねーか」
「違くない。俺は悲し涙を見たいわけじゃない」
悔し涙、嬉し涙、感激の涙…複雑なやつ
いろいろあんだろ。
つまりレイを悲しませることのないように、精一杯努力をしていこうということ…
互いの目が細まり、ジッと見つめ合う。
奥に見えるなにかを懸命に探ろうとするかのように。
……なぁ、知ってたか五条。
おいらより先にその約束を交わしてきたやつは、
お前だけだぞ。
で、今になっておいらは思うんだ。
お前はその約束をずっと守れてる。
誰よりも一生懸命にな。
ーFinー